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2022年05月04日

火縄銃の有効射程

火縄銃の有効射程
火縄銃の有効射程と言うのは一般的にかなり短いと思われています。
50mより離れると当たらないとか、弓矢より劣るだとか。
冗談みたいなことが大真面目に言われています。
50mなんて現代のエアガンでもまあまあマンターゲットに当たるのでは。
散弾銃のバードショットなら弾速の減衰からして有効射程が短いですけどね。

以前、口径が大きくなると射程が延びるという砲術家レベルでの内容を書きました。
普通の軍用銃をちゃんとした兵士が撃つときは300mぐらいまで近づけば撃ち始めるとも。
今回は一般の農民兵レベルで考えてみます。

まず、有効射程と言うのは用途によって変わります。
現代で言うと警察の狙撃銃なんかは人質を取った相手を一発で確実に行動不能にし、
人質には当ててはいけないということで銃の性能的にも狙撃手の能力的にもかなり余裕を持った距離が有効射程でしょう。
次に特定の人物を狙った狙撃も二の矢が撃てるかわからないのっで確実性が重要になります。
怪我させただけってわけにもいかないでしょうしね。
動物に対する狩も外したら逃げられる可能性が高いです。
まあ、逃げられるだけと言えばそれだけなんですが。
そういう風に考えると、大人数の合戦なんかは誰に当たってもどこに当たっても良いし、
弾に余裕があって相手が徐々に近づいてくるなら当たる可能性のある距離で撃っておいて損はないとなるわけです。
そのため、命中率より発射速度を重視した軍というのもあります。
一発必中だと考えなければ有効射程が延びるので、今回はそういう合戦を考えてみます。
しかしながら、ある一定の距離を離れると銃の命中率(集弾性)に関係なく全く当てられないということも考えられます

弓矢の時代は弓を使う人間はほとんど訓練された武士で、使えない人は投石でもした方が良いぐらいだったかもしれません。
銃は農民でもすぐの訓練で使える反面、その当たる限度が50m程度だったという可能性もあります。
恐らく、水平射撃で当たるのがそれぐらいまでなんですよね。
弓矢っていうのはまあまあ安定して射ることができる人は、距離が離れていても、命中率が低くても数を射れば当たると思います。
その距離がいくらかわからなくたって、手前に落ちたか飛び越えたかで修正ができます。
届く範囲はそのうち当たるよと。
ところが、銃は弾はど見えないのです、どこまで飛んでいったか分からないぐらい飛ぶのに。

身近に考えられるよう投石で例えてみます。
投げやすいサイズの粒ぞろいの石が用意されていて、離れた割と大きな鉄板に投げてくださいと言われても、大抵の人はそのうち当たるでしょう。
しかし、それが真っ暗闇の夜中に鉄板だけ何とか見えているような状態となれば、力加減や角度を変えながら暗中模索で投げて、当たった音がして初めてどのように投げれば良いのかわかると思います。
それで当たるようになったところで、また違う距離の鉄板に当てろと言われれば、さっきまでの軌道が見えていないので参考に出来る部分が少ないです。
そういう意味ではエアガンなんかは弾道が見えるので実銃よりずっと修正射撃がしやすいわけですね。

つまり命中率というと弾の分布を考えてしまいますが、射手が弾道の曲線を覚えていないとそもそも分布域が相手から外れている場合があり、
そのまま撃ち続けるといつまでたっても絶対に当たらないのです。

銃の訓練は操作法と正照準の狙い方がまずは基本で最低限。
ここが火縄銃で50m程度だと思います。
いえ、100mとまでは言えませんがもうちょっと離れても大丈夫でしょうけど、キリ良く確実なのがそれぐらいと。
現代で言うと拳銃ぐらいの山なり弾道でしょうからね。
それ以上は各距離で実際に撃ってみて、距離ごとの狙点を確認しておかなければなりません。
弾道が見えないので、的を撃って実際に着弾するまで試行錯誤して、
当たったときの狙点を覚える、それを各距離繰り返すと。
しかも、その的への着弾も紙や木が相手だと実際に見に行くか、誰かに的付近で見ててもらわないと着弾したのかすらわからないのです
そのようなことを命中率の悪い銃でやると労力がまた膨大に増えます。
当時の各流派の教本でも各口径、各距離ごとの狙点や構え方は書いてありますが、
実際にやってみずにできるか、本当に教本通りになるとしてそれを信じて撃ち続けられるかですね。
仮に距離ごとの撃ち方を完全に覚えたとして、何らかの要因で一発外した時にそれでも狙点は合っていると信じて撃ち続けられるかどうか。
本当に狙点が違った場合はそのままいくら撃っても当たらないかもしれないわけで、なかなか強い精神が要ります。
ベテランのパイロットでもは空間識失調になると計器を信じられなくなるわけですから、自分の覚えている狙点を信じるというのは難しいです。
長距離射撃が夜間飛行並みに難しいとまでは言いませんけどね。
何にしろ、農民兵には厳しい話でしょう。
現実は風も吹いているでしょうし。

火縄銃でも照尺があったり、距離ごとに取りつける器具などを使うと狙点を把握するのが楽で、かなり信頼もできると思いますが、
日本人が本格的に照尺を使うのはエンフィールド銃からかもしれませんね。
これは農民兵でもすぐに使えるので、誰の有効射程も一気に延びてもおかしくありません。
そのエンフィールド銃の照尺を外して火縄銃タイプの慣れた照門にしてしまう人もいたかもしれませんが・・・

火縄銃の長距離射撃は銃の集弾性能よりも人間の方が暗中模索という話でした。
航空機を対象とした場合なんかは、曳光弾でも混ぜないと本当に当てられないだろうなと思ったのは余談ですね。



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Posted by ラスティネイル at 01:49│Comments(0)古式銃(コラム)
 
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