2018年07月15日
管打ち式の和銃
管打ち式の和銃です。
火縄銃の形をした管打ち式の銃は人気がなく、割りと安く買えるので古式銃を初めて買うにはお手軽でお勧めです。
状態が良くてもそんなに高い値にはなりません。
まあ、この銃は状態も悪く、確か5万円程度で買ったものですけどね、安かったからつい・・・
錆の塊みたいなものになると3万円台で買えますね。
しかしながら、人気が無いとか、安いからといって侮ってはいけません。
完璧とはいかなくとも、見所のある銃も多々混ざっているのですから。
この銃の特徴は小口径で肉厚の銃身です。その分思いですけどね。
右側がこの銃で口径11mmです。左は口径の近い比較用の一般的な火縄銃で口径10mmです。
銃身の外側の一番細いところは火縄銃の方は16mmなのに対して20.5mmでかなり太く感じます。
肉厚で3mmと4.75mmでそんなにわけではないのですが。
薬室周りは火縄銃が27.5mmに対して25.5mmとむしろ細いです。
太さの変化が無いのでずんぐりした印象です。
銃身以上に銃床は太さの変化が少ないです。
カラクリは火縄銃と違った軸が地金にささっているのがわかります。
カラクリを固定するためのネジはかなり小さいです。
用心金が無くなって(切断)されています。
用心金の土台部分があるのは和銃では珍しいですね。
ニップルは割れていました。
ニップルの取り付け部は最初から管打ち式で作られた形状ですね。
それに対してハンマーは取って付けたような安直な形状です。
銃床の薬室下部分にはこのように木に花が咲いた飾りが埋め込まれています。
元目当てです。
銃身は丸の上面に一段高く平面があります。
先目当てです。
らっきょう形の柑子が何だか汚い感じがしますね。
パーツクリーナーで拭いたら綺麗な銀色が出てきました。
黒々とした銃身に見えますが、錆びているのを骨董商が状態を良く見せるために塗っていて、
一緒に銀部分も塗られてしまったのでしょう。
木部がラッカー塗装されている銃も多いですしね。
柑子はあまり膨らんでいません。そもそも銃身が細くなっていないので、
柑子をそれより太くする必要性があまり無いのでしょう。
真鍮?部品も黄色く塗られていました。あまり見ない色の材質の金具ですね。
絵も変わっていて、丘の上に神社と御神木があって、奥の方が山ですね。
下側の飾りも色が変わるとイメージが違いますね。金具自体も違う場所のですが。
地金は塗装を剥がしてもあまり変わらず、飾りより材質の色が濃いようです。
銃身根元近くの飾りは山の中の矢倉の上に建物があり、胴金の方に丸い月があります。
銃身を外すと銃床に入ってる部分はかなり錆びていました。
出てる部分との境目がはっきりわかります、塗られているのもありますが。
銘も読めず、登録証では不明となっていました。
裏側は八角形の形状です。
尾栓は丸に溝が入っています。
錆びているのでまだ外していません。
銃身裏側の錆を見ていると、ザラザラした錆と黒く艶のある部分が交互になっていて、
良く見ると左捩れの螺旋になっています。
錆を落として色が変わるか確かめてみることにしました。錆が落ちてわからなくならないことを願いながら。
見事に模様が出てきました。
銃身というのは鉄の板(瓦金)を丸めて筒にしていて、そのまま仕上げるとうどん張りと呼ばれる銃身になります。
上等なものはリボン状の鉄(葛)を巻いて繋ぎ目が開くようなことを防ぎ、巻張りと呼ばれています。
銘の近くに巻張、総巻張、二重巻張なんて入ってるのはそういう工程を得た上等な筒だと表しているわけです。
それで、そのリボンを巻くときに違う材質のリボンを並べて一緒に巻くと、交互に並ぶのでこのような模様になります。
銃に限らず、色が交互に巻かれているのは蛭巻といいます。
錆を落とした部分と、落としていない部分と一緒に見ると全くの別物ですね。
錆を取るときに、色が残る筈の部分に傷が入ると一緒の銀色になってしまいました。
完全に磨いても境目がわかるのか、その後に黒染めして色の差が出るのかも興味がありますが、
自然な色を無くすのも勿体無いのでやめておきます。
製作時の仕上げはどのようなものだったのでしょうね。
表側も錆を落とせば同じ模様が当然出てきますが、
丸は錆が落としにくく、さらに上面が一段出てるので大変そうです。塗装もされていますしね。
ちなみに、銀色になったのは錆びていた方で、色が残っているのは艶のあった方です。
艶のある方は錆ではないので錆を落としても変化が少なく、錆びていた方は錆ごとサラサラと色が落ちました。
今まで錆を落としていてこんな簡単に色が落ちることは無かったので、この材質は初めてですね。
二つの材質を合わせて長所を合わせ持たせたかったのか、単に外観のためなのか。
銃床が虎目の銃の中には明らかに銃床と銃身の縞を合わせた感じのもありますけどね。
銘は丸山義房作で巻張とかは書いてないですね。
こっちも錆を軽く落としたので模様が少し見えています。
カラクリを外しました。
カラクリを止めているネジは小さく頼りにならない感じです。
トリガーは金属製の土台についていました。
これは管打ち式なので洋式銃の構成を意識して一緒にしたのですね。
シアがかからないと思ったらシアスプリングがありませんでした。
バネが松葉バネではなく一枚の板なのは珍しいですね。
シアスプリングが入っていたであろう溝です。
ハンマー軸は四角いナットで止められています。
洋式銃ではナットはあまり見ませんが、和製の管打ちではままあるようです。
バネの先端が滑りながらハンマーを回転させる力を伝えるのではなく、
小さな部品を介して引っ張るようにしています。
これもエンフィールド銃などからでしょうね。
バネを回らなくしてテンションをかけるためだけのネジがあります。
地金は火縄銃と同様に厚さが変わっていています。
カラクリの分解もしてもいいのですが、真鍮製のネジ山が心配なのでやめておきました。
管打ち式の和銃ですが、火縄銃を改造したものと違い、管打ち式にするためにと考えて作られたのがわかる一丁です。
蛭巻の模様も銃身の製法が目で見てわかる興味深いものでした。