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2019年05月03日

田布施流の火縄銃




今回は田布施流の火縄銃です。
独特な銃ですがあまり話に上がらないのは、人気がないからか、数が少ないからか。
火縄銃関連の本でも銃本体よりも田布施流の書の絵の方が見かけるぐらいです。
その絵でもちゃんと田布施流とわかるのは独特な銃だからこそ。
あとは見かけても修理が悪いのか、元々の田布施流と違う変なのを見かけます。
知っているものでまともなのは、所氏の本に載っているもので、この個体より良さそうです。
もしくは、博物館巡りでもするといいのでしょうか。
3年ぐらいずっと持っていた銃でして、やっと記事にします。
実は以前に載せた備前筒もこれの下準備だったりします。
地域が近いからか作りも似ていますが、異種材の組み合わせの話で必要だったので。


ぱっと見で田布施流とわかる独特な形の火挟、南蛮筒(海外製)のカラクリの特色を色濃く残す地板後部の形状、
火皿の側面も上半分は隠す火蓋となっています。
雨覆も前部が斜めにカットされておらず四角いですね。


火挟の先端が火皿から離れていますが、これが正しい状態のようです。
先端が火皿と平行になってるのも本体の位置だからでしょう。
独特な火挟の形状をしてるのに、曲げて火皿に付くようにされているものもありますね。
田布施流を手に入れた方にはそのようなことはしないでいただきたいところ。



火鋏のバネ(弾金)は結構強く、コックしてから引き金を引けば火挟は慣性で火皿までいき、
バネの力で元の位置に戻ります。
火のは軸の前後で弾金に当たっているので、位置が定まるようになっているのです。
今で言うリバウンドハンマーですね。
問題はどうしてこのようにしているのかです。
単純に浮いてる分だけ火縄を長く出しておくとかなら、
他の銃より火を付けたまま長く位置を調整しないでいられますね。
特別に長く付けない場合のメリットととして、撃つ前のことを考えると、コックしなくても火縄が着けられるように、
撃った後を後を考えると押し付けられて火が消えないようになどでしょうか。
そもそも、火穴から噴き出るガスで火縄は吹き飛ばされそうですが。
点火薬の燃焼が火穴を通して薬室に伝わった後、
発射薬による高圧なガスが勢い良く火穴から上だったり、右上に噴き出るわけです。
点火から噴き出るまでのタイムラグはあるので、火挟が元の位置に行って火縄が吹き飛ばされずに済む可能性もありますね。


多分そこまでは考えていないと思いますが、ガスで火挟が摩耗していくのも防げるかもしれません。
画像の火鋏は若干摩耗して右側だけ先が平らではありません。



カラクリは基本的に鉄製ですが、先ほどの備前筒のように異種材が着せてあります。
恐らく、火蓋の内側にコの字状、雨覆の右側と煙返しの前側に耐腐食用に銀が着せてあります。
煙返しの方は備前筒にはありませんでしたが、こちらは取っ手部分にはありません。
雨覆の楔も銀で出来ているようです。


鋲は真鍮のような銅合金で、頭は銀が着せてあります。
矢倉鋲は紛失されていたので、とりあえず機能する程度のものを作りました。
ちゃんとしたものはいずれ。
これはカラクリの地板の側面に銀が着せてありはしません。
所氏のは備前筒の様に真鍮が着せてあるようです。



代わりに火挟の裏の地板に当たる部分に銀が着せてあります。
同じ摩擦を良くしたり、錆による固着を防ぐ目的なら、こっちの方が銀が少なくて済み、
着せる作業もしやすいのでしょうね。
でも残念、鉄製の盗人金が銀板と噛み合うようになってしまうので減ったようです。
真鍮で補修されています。
やはり地板の方に着せて、火挟と盗人金は鉄同士で噛み合わないといけません。
まあ、これは失敗だとして、見えないところにわざわざ着せていることから、
地板に着せているときも単なる飾りではなさそうだと判断できます。


火挟の軸は地板に入るところは平たくなっています。
組み立ての時に上から矢倉鋲を差すのに向きを気にしなくて住んで良いです。
後は軸の丸い部分の長さを火挟の厚さより長くしておけば、火挟のガタをコントロールできます。
作るのは多分大変ですが。



軸を使うタイプの普通の平カラクリです。
真鍮製の押金は板を曲げたものですが、先ほど薄くなるようにしてあるので、手間はかけたようです。



飾りっ気がありません。
引き金は銀で出来ています。
やっぱり、銀の触り心地が好まれたのでしょうか。
引き金の枠や矢倉鋲の穴の補強は真鍮のような材質。
矢袋の溝を薄い木で埋めてあるのも備前筒と同じです。



銃身はシンプルな八角です。
銃床の収縮でなのかカルカが抜けません。
以前の所有者がなんとペンチで抜こうとしたようで、ペンチの傷が付きつつ割れて欠損しています。
酷いものです。余計に抜きにくくなりましたしね、抜くのは今後の課題です。
銃身を外すのも非常に苦労しました。
前から少しずつ外していきましたが、銃床がしなって、折れないか怖かったです。
まあ、折れないように慎重な方法でやりました。
照星もシンプルな形状で、定番ですが銀が埋め込まれたいます。



照門も良くある形状ですが、横の穴の径が大きいです。
古い銃は大きめな気がします。
まあ、露が抜けていくにしろ、線香の燃えカスを取るにも大きい方が良さそうですしね。




惣巻張となっています。肉厚の一番薄いところは3mmぐらいですが、全て本当に巻いてでしょうか。
銘は江州国友彦右衛門 知忠となっています。実際に彫られている字は古いものもありますが。
この銘は所氏のものと同じですね。
ちなみに、登録証は江州国友彦右衛門 花押となっています。
花押というのは当時のサインのことなわけですが、登録書は花押となっていて、ただの文字のことも多いです。
そういうものなのか、読めないと花押としてしまっているのか、勉強不足でわかりません。


尾栓の後部にも力なのか廿(二十)なのかあります。
頭に全く傷がない綺麗な状態なので、尾栓を外さすときはどうやってやろうかと考えています。


銃床には墨書きで赤浦与三郎 清忠作 花押 とあります。
これは本当に花押でしょう、読めません。


銃床の尾栓が入る穴と尾栓の形状もピッタリなので、銃身を入れるときに先が上を向いてると奥まで入りません。
尾栓がテーパーになっているにも関わらず。
まあ、しっかりとした作りの火縄銃では結構多いことです。
奥まで銃身が差し込まれていないと、雨覆と銃床が干渉して銃身と銃床を合わせていけません。
銃身後部を銃床に差し込んだ後は、銃身を後ろに押しつつ合わせていかなければならないわけです。。

火挟の件は少なくとも実際に撃ってみないとわからないかもしれませんね。
勿体なくて撃つ気になりませんが。
デザインも機構も独特で楽しませてくれる一丁です。  

Posted by ラスティネイル at 03:40Comments(0)古式銃